【刺 針】 2008年8月15日付

 いま、中国で行われている北京オリンピックを見ていて「人間の身体能力というのは、限りがあるのだろうか」という疑問を持ってしまいそうだ。

 次々と世界新記録で金メダルを獲得している米国競泳のフェルプス選手。銀メダルを獲得した男子体操団体の日本を、大差を付けて寄せ付けなかった中国選手たちの演技、日本中の期待を背負いながら見事にオリンピック連覇を果たした男子平泳ぎの北島康介選手。
 いずれの選手も強靱な肉体と精神を持ちあわせ、他を寄せ付けない技術によって金字塔を打ち立てている。

 そんなアスリートたちのしのぎを削るような熱戦が続いているなか、ショッキングなニュースが飛び込んできた。
 女子マラソンの日本代表選手である野口みずき選手の、北京五輪欠場だ。

 特に士別市にとっては、野口選手が何度も合宿に訪れ、ハーフマラソン大会にも出場するなど縁の深い選手。市内の関係者は今回のニュースについて、一様に「残念だ」と肩を落とす。士別市役所前に設置していた野口選手を応援する懸垂幕も、早々に取り外してしまった。

 想像するに、世界最高の舞台で、世界1を目指そうとすれば、競技日程に照準をあわせて緻密なトレーニングメニューをこなし、肉体と精神を鍛えあげていかなければならない世界なのだろう。

 猛烈な練習を繰り返しながら自己の能力を高め、ある時は生活の一部分を犠牲にして、五輪に向けた調整を図っていかなければならないのかもしれない。

 そんなぎりぎりの状況にあって、基本となる身体にトラブルが発生してしまうと、精密機械の歯車が一つが欠けてしまうかのように、修正が効かなくなってしまうのでは。

 すべての人たちが、金メダル選手と同じ練習をこなすことができたとしても、全員が金メダルを獲得できるとは考えられない。天性の才能を土台に努力を積み重ねていくことで、選ばれし者たちだけがそのステージに立つことができのだろう。

 とにもかくにも、並の人間では無理なことである。

 とは言え、いつかはこのふるさとから、五輪の舞台で活躍してくれる選手が再び現れてくれることを願っている。 (功)