【刺 針】 2008年9月10日付

 今年の秋は、例年になく暑い。
 いつもだと、この地方はお盆を過ぎると朝晩はひんやりするような気温となり、9月には本格的な秋を迎えるものだ。
 ところが今年は、いまだに窓を開けたまま寝てしまう状態が続いている。これが「残暑」なのだろうか。

 さて、この好天のおかげで農作物は全般的に順調な生育で、豊作の期待感が高まっている。
 もうしばらくすると、透き通るような青空に白い雲が浮かび、紅葉間もない木々を遠目に、こうべを垂らした稲穂の中をコンバインの音が響きわたる、農村部ならではの「出来秋」の風景を見ることができるはず。

 ところで先日、仲間とともに栽培してきたソバを収穫し、その実をひいて出来秋を味わった。

 その味わいは格別であったが、ソバの種まきから口に入るまで一連作業を通して、農家の大変さ≠、はらずも体験することができた。
 特に乾燥後、ふるいにかけて大きなゴミを取り除き、唐箕(とうみ)といわれる器具を使い選別する作業には苦労した。
 農家の人たちからすれば「それごときに」と、おしかりを受けるだろう。

 子どものころ、米をとぐときに「米粒を一つ流すと、片目がつぶれる」と親から教えられた。

 おそらく、農家の人たちの苦労が分かっていたからこそ「一粒でも大切に。そして感謝の気持ちを持ちなさい」ということだったのだろう。

 今でこそ、農家も機械化が進んでいるが、天候を気にかけながら食料を生産していくことは並大抵のことではない。

 唐箕の作業だけで音を上げてしまった者にとっては、農家の人たちが作ってくれた米一粒、野菜一玉にでも感謝せざるを得ない。

 農家の人たちが、一生懸命に汗を流した作物だからこそ、おいしく味わえるのだとつくづく感じている。 (功)