【刺 針】 2008年3月11日付
ほとんどのアメリカ人が日本の首相の名前を知らないが、その逆、日本人のほとんどは米国の大統領の名前を知っている。
その大統領選の民主党候補を決める争いが熾烈を極めているが、わが国は今、日銀総裁や暫定税率のことで頭が一杯で、それどころではないのだろう。メディアへの露出度は減ってきている。
とはいえ、その成り行き如何が世界経済に大きな影響を与えるとあっては、とうてい無視できない。
ひと頃のわが国の報道を見ていると、毎日のようにクリントンとオバマの両氏ばかりが新聞やテレビで報じられるから、民主党の大統領選候補がそのまま大統領になるのではと錯覚しかねない勢いだった。
そんな候補者選びの華やかな舞台の裏で、アメリカは今、サブプライムローン問題で苦しむ人たちが多い。
そういう人たちの生活がどうしても気になって、関連した本を3冊ほど読んでみた。
「超・格差社会 アメリカの真実」(小林由美、日経BP社)、「アメリカ下層教育現場」(林壮一、光文社新書)、「ルポ 貧困大国アメリカ」(堤未果、岩波新書)の3冊である。
これらの本が共通して指摘しているのは、アメリカが日本など足下にも及ばない学歴社会であるということである。
アメリカでは今や高校卒だけの学歴ではほとんど定職につけない。だからこそ若者たちは必死になって最低でも高校だけは卒業しておこうと思う。将来、大学進学への可能性も開けるからだ。
だが大学を卒業してみた彼らには、今度は在学中の奨学金と学費に充てたクレジットローンの返済が待っており、定職につくことができなければ、借金返済地獄が待っている。
中流層もいったん定職を失えば、医療保険などの支払いも出来ず、病気にでもなろうものなら、多額の借金とさらなる底辺生活が迫ってくる。
ここにはつい最近まで伝えられてきた好景気のアメリカはない。
そしてふと思った。
わが国もやがてはそんなアメリカの状況に酷似してくるのではないのかと。
この状況は何としてでも避けねばならぬが、機能不全に陥っている今の国会に、国民は何を期待していいのかわからぬままである。 (浩)