【刺 針】 2008年4月13日付

 12日付本紙に掲載した「馬の飼育頭数」の記事を書くため、農家の方々に話をうかがった。

 北ひびき馬事振興会の菅沼良一会長、さらには武徳町で20頭ほどの馬を飼っている山岸俊二さん。「どうして、馬を飼っているのですか」との問いに対して、異口同音のように最初に出てきた言葉が「好きだから」である。

 先人たちは、北海道の原野を切りひらき、厳しい状況に堪え忍びながらいまの豊かな大地を作りあげてきた。その先人たちと北海道の開拓を共にしてきたのが、数多くの馬たちである。

 山から原木を運び出したり、大地を耕したり、時にはソリを引いて貴重な交通手段ともなってきた。この大地は、人馬一体となることで礎を築いてきたといっても過言ではない。

 今も馬を飼い続ける人たちからは、そんな思いがひしひしと伝わる。共に人生を歩んできた互いの深い愛情が、人と馬をつなげているようにも感じられる。

 菅沼会長は、馬の飼育で出る良質なたい肥を農地に還元することで、農産物の生産性は上がり、トータルでのメリットは十分にあるという。
 にもかかわらず、この地域での飼育頭数は減少の一途をたどっているのが現状。

 合理性や効率を追い求める現代社会の物の見方・考え方によって、役割を終えたものを次々と淘汰してしまおうとする物質社会の歪みが、馬の飼育にも影響をおよぼしているのかもしれない。

 山岸さんは馬事振興のために視察してきたフランスの事情について話してくれた。

 フランスでも馬の飼育は数を減らしているらしいのだが、馬を飼うことはある種のステータスであり、その歴史と伝統を確実に次の世代が引き継いでいくのだという。その飼い方もフランスらしい優雅さがあり、共進会の会場は社交場のような雰囲気を漂わせるという。

 歴史の重みを、しっかりとした形で受け継いでいくことの大切さを知っている国民性なのだろうか。

 菅沼会長や山岸さんらの、馬に対する思いを聞いているだけでも、馬が徐々にその姿をけしかけている現状には一抹のさみしさを感じている。 (功)