ペットボトルを使った人工雪成長装置に期待する

北海道大学低温科学研究所 助教授 古川義純

 雪の結晶の精緻で対称の発達した美しい形は、我々に大きな感動を与えてくれます。しかし、北海道のような雪国に住んでいても実際に雪の結晶を観察した経験がある人は、極めて少ないのが現状です。ましてや、雪の結晶の成長する様子を見た事のある人はほとんどいないと言っても良いでしょう。
 今回、平松和彦先生の考案されたペットボトルを利用した人工雪の成長装置は、気軽にだれでも簡単に人工雪の観察が出来ると言うことで極めて画期的なものであります。人工雪の実験は、中谷宇吉郎先生に始まる長い歴史をもっていますが、従来は低温実験室などの大がかりな設備や、精密な成長条件のコントロールが必要であるなど、専門家であってもそう簡単に実施できるものではありませんでした。平松先生の装置は、この常識を完全に覆えし、専門家にとっても極めて大きなインパクトを与える物でありました。しかし、この簡単な装置も良く考えてみると、実に合理的に人工雪の成長に最も適した条件を実現していることに気づき、平松先生の科学に対する鋭いひらめきと優れた教育者としての素養を十分に感じさせてくれます。
 この装置は、学校をはじめ広く理科教育の現場で今後大いに活用されるべき優れたアイデアであることは、ここで改めて述べるまでもないことです。一方、このアイデアは、もっと専門的な科学研究の分野にも応用の可能性が非常に高いものであることを強調したいと考えます。例えば、この装置は完全に閉鎖された空間内で雪の結晶を作れるので、現在問題になっている酸性雪の生成機構の解明やオゾン層の破壊に対する雪の結晶の影響など、特に化学物質の関与した実験的研究に応用できるのではないかと考えられます。
 今後この装置が、教育現場でそして科学研究の現場でも大いに活用されることを期待します。