2002年3月号     1月2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 |   top
 



 


 仔牛ちゃん受難の日 
         ―このお姿にびっくりしないでね

  先日、子牛の除角を行った。除角とは牛のツノを切除することである。
 キン○マについても同じ事が言えるが、あまり大きくなってはこちらも切りづらいし、牛の方も傷口が治りづらい。それに今の時期は蝿もいないしウジがわかなくていいのだ。
 さて、そうなると子牛を放し飼いで飼ってるわが家では一頭、一頭首に縄をつけて繋がなくてはならない。これがまぁ面倒なのであるが、どうせ苦労して捕まえて繋ぐなら、繋がなくては出来ないことをいっぺんにやっちゃおうかと欲がでてくる。
 そうだよ、除角に去勢に耳標もつけて、ついでに斑紋も書いてしまおう! こりゃ合理的だぜ。いぇ〜い♪ そうと決まれば、まずは除角だ。しっかりとロープで頭を固定し、ツノ周辺の毛を刈り上げる。その時点でたいていの子牛は怖がって暴れ始めるのだから煩わしい。ええい! だらしない、毛を刈られたぐらいで喚くんじゃない、まだ何も痛くないハズだぞ、痛いのはこれからだ!!(笑)
 そして大きな爪切りのような専用のハサミでバツン! とツノを切断。その瞬間吹き上げる血しぶきはまるで時代劇の殺陣シーンだ。そしてさらに焼きゴテで切断面を焼く。こうなると、やられた子牛の悲鳴はいっそう派手なものになり、同じ牛舎内にいる牛すべてが息を呑んで何事か?! と言わんばかりの目で注目している。しかし、たまにだが声ひとつあげず、ひたすら耐え忍ぶ牛だっているのだ。それはすべて和牛の血が流れているF1と呼ばれる牛である。さすがは日本男児、すばらしい根性だ!!
 メスにでも喩えるならば戦国武将の奥方なみの気丈さだ。見習うべき誇り高さである。
 それに比べてホルスタインはまったく根性がない。(うちだけの傾向かもしれんが……)
 こうして除角が済めばすぐに今度は耳標付けだ。耳標とは牛を個体管理するための番号札のピアスと考えてもらえばいい。これも両耳にしなければならないし、人間のピアスの何倍も芯が太いのでかなり痛そうだ。でもまぁ、除角の痛みに比べればたいした事はあるまい。
 そして、オスには輪ゴムでキン○マをはさむというシンプルな方法で去勢。(小さいうちは切らなくても簡単に去勢できるのだ)
 最後は登録証を申請するのに欠かせない斑紋(牛の体の模様)を書く。
 いやぁ……牛も疲れただろうが、人間も忙しいもんだ(笑)
 こんなときに来客がなくてヨカッタ!
 その昔、除角中に保険の集金屋さんがきてしまい、私は慌てて家に向かったのだが、その集金屋さんときたら私を一目見るなりびびって帰ってしまったのだ。せっかく仕事の手を休めて走っていったのに、と怒りつつ、ふと鏡に写った自分の姿を見て私は納得してしまっ……。
 私は顔から全身にかけて牛の返り血を派手に浴びており、しかも右手にはツノの一部が切れ損なったときの為に包丁を持っていたままだったのである! そりゃ怖いわ!!
 あの時は集金屋さんが警察に「森川さんちで何やら凄惨な事件が」などと通報しないようにと心から祈ったものである。もちろん事情を説明すれば済む話だが、誰だって痛くもない腹を探られるのは嫌なものなのである。
 というわけで集金屋さんをはじめとする皆様、わが家で血まみれの姿で包丁を持った私が走ってきても驚いて逃げ帰らないでくださいね。