人に腸閉塞という病気があるように、牛にも似たような通称「ガス」と呼ばれる病気がある。
これはなんらかの消化不良を起こすことで胃にガスが溜まり、腹部がひどく膨張してしまう病気だ。排尿排便の異常はもちろんのこと発熱で全身は汗ばみ、下手をすると死にも至る。
この原因がたまたま胃の調子が悪かっただけならばガスを抜いただけですぐ治るのだが、例えばビニール製のロープといった消化できない異物が胃に残っている場合などは繰り返し同じ症状が起こり、手術で切開しなければ完全には治らない。
うちでも私が子どもの頃に手術で切開したことがあったが、獣医さんが牛の腹にメスを入れた瞬間、はちきれんばかりに溜まっていたガスと胃の内容物が半径5bにも飛び散り、その有様はまさに「ベコ(牛)ガス爆発!!」。おかげで近くで眺めていた私はモロにその“爆破”の直撃を受け、大変な目にあったものである。
さて、では腹を切らずにどうやってガスを抜くかというと、獣医さんに頼むと筒状のボールペンのようなもので牛の腹を突き刺し、その筒を通してガスがしゅしゅゅ〜〜う! と抜けていた。これだと傷痕も小さいので縫う必要も無い。
だがガス抜きだけならわざわざ獣医さんを頼まなくても、自分で手軽にできる方法がある。
それはやや固めのゴムホースを牛の口から突っ込み、胃袋に届くまでひたすら突っ込み続けるという荒業である。
ホースの先が目的地まで達するとやがてホースを伝って胃の中に充満していたガスが屁のような派手な音をたてて抜けはじめる。それはもうオモシロイくらいだ。だって、初めはカエルの腹みたいに膨らんでいた牛の腹が別人……いや別牛のようにスマートな腰まわりになっているのである。まるでよくあるダイエット商品の広告写真の使用前・使用後みたいだ。
これには思わず私も口にゴムホースを突っ込みたくなってしまう。(私の場合は脂肪で太ってるので効果はないだろうが。う、自分で言って傷ついた……)
とにかく、このゴムホース大作戦はガスを抜くだけならばとても有効な応急処置なのである。
これを知り合いの酪農家に教えたところ、「苦しんでる牛の口から無理やりグイグイとホース突っ込むなんて可哀相」などと言っていたが、このお方、先日私にこうメールをよこした。「普通の水撒きのホースじゃ柔らかすぎてうまく胃の中に入っていかないね」と。
そうなのだ、ガスコンロに使われているような堅いホースでなくてはうまくいかないのだ。しかし、それではあわててただろう。なんせ、この症状がでたら一刻も早く処置をしなければ牛の体がもたない。それで牛は大丈夫だったの? と訊ねると彼女曰く「いや、健康な牛で試しただけだから」
オイオイ!!! それが病気の牛にホースを突っ込むのが可哀相と言っていた人のやることかい! 私としては病気でもない牛に試す方がよっぽど可哀相だと思うのだが……(汗)