2001年4月号    ● 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 ●  top
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 消えた死体 〜続・VSタヌキ!!

       ―役者じゃあんた、一枚上かもね
 

 タヌキと母の仁義なき戦いについてはすでにご紹介したが、あの話には実は後日談がある。
 あの後、タヌキは五匹ほどで徒党を組んで搾乳中に堂々と牛舎に入り込むようになった。
 しかし追い払おうにもこちらは搾乳中。手が空けば、同時に搾乳している他の牛の様子を見なければならない。一頭終ればすぐ次の牛、次の牛……と、流れ作業の仕事が続く。機械も人の手もまったく休めない。
 だが! タヌキの乱入で牛舎内はちょっとしたパニックだ。
 イタズラ好きのタヌキは処理室の備品を棚から落としたり、別の場所へ運んだりやりたい放題。しかもわが家で飼っているたくさんの猫はそろいもそろってタヌキに対する威嚇の遠吠え大合唱!! のみ。
 ただならぬ猫たちの様子と見慣れぬデカイ生き物(太ったタヌキは意外に大きくて、そこらへんの犬よりデカイ!毛皮のせいか!?)を見て、その図体の割に小心者の牛たちも鳴くわ吠えるわ暴れるわの大騒ぎ。
 そこで、今度は父と私の出番である。先日の頭脳戦では母がわが家の代表としてタヌキと戦ったが、今度は直接対決だ!!
 まずは先が二手に分かれた木の枝を使ってタヌキたちの捕獲に乗り出した。捕まえてボコボコに殴りつけて痛い目に遭わせてやれば怖がってもう寄りつくことはしないだろう。少なくとも人間がいるときには。(動物愛護団体に叱られそうな作戦だがこちらも他に方法がないのだ)
 さぁ、いつもの搾乳時間、奴等はやってきた。私と父は搾乳の手を止め、通路の両側からタヌキを挟み撃ちにして角に追い詰め、枝で首根っこを押さえつけた。
 するとどうだ!
 タヌキはコロンとあっけなく体を引っ繰り返してピクリとも動かなくなった。
 ん??? まだ何もしてないぞ。なに? こいつ。恐ろしさのあまり失神したの?
 あまりのあっけなさに拍子抜けした私と父は枝を手放し、タヌキに歩み寄った。その途端、タヌキは池谷幸雄かと思うような身軽さで体を反転し脱兎の如く走り去った!!
 しまった!逃げられた〜〜〜ッ!!!
 これが噂の「タヌキ寝入り」か。まんまとタヌキの演技力に騙された。
 父曰く「市民劇場のお前より芝居が上手いんじゃないか?」確かに上手いかもしれない……く、く、悔しい!! タヌキのくせに。市民劇場の看板トップ女優(←自分で勝手に思い込んでる)の理加ちゃん、役者としてタヌキにライバル意識を燃やした瞬間であった……。
 くそ〜、次こそは負けん!! 牛舎にはまだ数匹のタヌキがうろちょろしている。私と父は木の枝を再び手にし、さらにタヌキを追った。
 一匹を処理室に追い詰め、木の枝をタヌキに突きつけた瞬間、タヌキは背後の水槽にドボン! ああ、落ちた。バシャバシャともがくタヌキ。思わず木の枝で突つくと、そのうちタヌキは力尽きたのか水面にぷか〜……と浮いた。
 あら、死んじゃった。哀れタヌキはドラえもんに……じゃなかった、土左衛門になってしまった。
 殺すつもりじゃなかったんだよ〜。ごめんね、タヌキ。でも天罰よ!! そう思いながらタヌキの遺体を花壇の側に運び、後で埋めよう……と仕事に戻り、しばしの空白
の後、再び花壇へ足を運ぶと……
 あれ? ない、タヌキの死体が、ない、ない、ない!
 どういうこと!? タヌキはあれでなかなかチームワークバツグンの団体(?)である。仲間が数匹がかりで運んだのか?
 それとも……生きていたのだろうか?
 だとしたら、本当にスゴイ役者かもしれない。そういえば森重久弥に似た面差しの老成した役者顔のタヌキだったような気がする。(おいおい)
 しかし確かに死んでいたと思ったのだが……いや、実際のところはどうなのだろう
? ミステリーである。