届いた新聞は        エッセイ―03


 府中にいたのは1年半。お次は阿佐ヶ谷南に引っ越しました。高円寺との境目です。アパート名、今度は「青雲荘」。
 青雲とは名ばかり。都区内では珍しい汲み取り式アパート。今にも崩壊寸前。壁はダークグレー。しかも高架線の斜め下、電車が走ると、アパートの中には轟音が響いた。

 なんたって3畳の部屋に格子模様の明かりとりがあるのがユニーク。
 友達曰く、「ここ昔、連れ込み旅館だったんじゃないのか」
 廊下は吹き抜け。風が回って、廊下に砂埃が舞うんだぜ、これが。「ヒュー、ヒュー」って。
 冬は寒い、寒い!  床は傾くし、日は差さないし、キノコは生えるし、泥棒は入るしで、貧しい青春にぴったり。

 そんな青雲荘のわが部屋にある日、一通の業界紙が舞い込んできた。
 誤配だったが青雲荘の住民には該当者なし。なんか宛先不明で、どうでもいいからわが部屋に放り込んだっていう感じでした。
  わたしゃその帯付からはみ出している見出しにがぜん好奇心がむくむく。
 なんたってストリップ劇場の業界紙なんだぜ、これが。  へえー、この世にこんな新聞が存在しているのかあ、と目を白黒させたよ、思わず。
  あー、すいません、と謝りながら、その業界紙を開いてみると。これが意外にまじめで、劇場のイベント情報や業界の動向などけっこう固い記事もあったり。

  で、何に一番興味をひかれたかというと、失踪した踊り子さん探しの記事でしたね。
 「○○さんがいなくなりました。消息がわかれば教えてほしい」というものです。まあ、新聞でいう「探し人」みたいなものでしょう。数人の名前が上がっていました。
 なんか、踊り子さん探しですからいわくありげ。踊り子さん、劇場の使用人と叶わぬ恋で夜逃げしたとか、給金前払いでまだ借金が残っているとか、行間から想像がふくらんでくるんですよ。

  でもね、とその時思いました。一般紙ならまだしも業界紙でその筋の人の行方を探してもしょせんは業界だけの狭い世界。業界から逃げよう? とした人が業界の目に触れるようなところをうろちょろしてるかって。
 いやいや待てよ、飯にありつこうと思えば、踊り子さんには身を粉にする仕事しかない。人目をしのぶように場末の温泉街で踊っているかも……。
 掃きだめみたいなアパートの青雲荘だから届いた手紙かも。まともじゃないよね、これって。