ピザの登場        エッセイ―10


 「今は昔、ケーキといえばバタークリームだった。それが生クリームに代わって、衝撃を受けたもんだなあ」(これ、私)。
 「衝撃っていやあ、20数年前、ピザの登場も、世の中にこんな食いもん、あんのかあー、とびっくりした」(これも私)
 友人に『ピザ食いにいこ』と誘われた。レストランで目の前に出てきたはいいが、さあ、これ、どうすんだ。丸いの、どうやって食うんだ。食べ方がわかんない。で、わたし、ピザを前に警戒態勢に入り、伏し目がちに友人が手を出すまで、ひたすら待っていた。恥はかきたくないからなあ。
 す、すると、友人はフォークも箸も使わず、手を使って食べ始めたではないか。
 その様子をとまどいがちに見つめていたわたしゃ、衝撃、驚愕、動揺……。
 おそるおそる友人の手動作をまねながら、口の中に押し込んだ。
 う、うまい!。やっぱ、洋食っていうのは、凄い! なんて単純に新鮮に感激したのである。
 7歳年下の同僚も「初めて見たピザに、これは何だ?」と首をひねったと、同じような体験を話してくれた。
 ところが20代前半の同僚諸君は、「ピザは当たり前の食べ物でした。衝撃を受けたような料理の登場はないですね」
 そうです。わたしら、40代以上はハンバーグの登場ですら、衝撃だったのだ。シュークリームを初めて食べたときも、うーん、こりゃ、最高! と感激したんだよ。
 なにせお菓子、っていやあ、近所の駄菓子やさんから買ってくる1個1円のあめ玉か、50円値(分)のかりんとうなんだから。
 デコレーションケーキなんか、クリスマスの時しか、食べられなかったもんね。
 にしても、バタークリームのケーキ、今や懐かしいとすら思わないなあ。