連載-01 士別市総合庁舎

 厳しい厳しいと叫ばれ、交付税などのマイナスが予想される中で、地方自治体ではなお公共施設の建設が進んでいる。一方では昭和30年代から50年代の高度成長期になって建設された公共施設は老朽化と狭隘化が進み、補修に過重がかかり、さらにはIT化への対応にも追われ、自治体がどこからも補助の望めない単独費の支出増が強いられつつある。それでも士別市の火葬場のように老朽化が著しくなれば、苦しい財政事情の中でも建設は必要となる。行政サービスの向上に公共施設の存在は欠かせないのである。この公共施設を検証して、将来の公共施設像の姿を探っていきたい。

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建設すれば20億円


=施設分散で手狭解消に=  IT化にはなんとか対応
 1日の来訪者が4〜500人に達する士別市役所総合庁舎。建設は昭和40(1965)年である。38年が経過する。
 建築面積延べ3900平方メートル。鉄筋コンクリート。備品も含めて総工費は1億4400万円だった。
 今、これだけのものを建てようと思えば「20億円は必要でしょうね」と市財政担当者は言う。
 この施設、実は士別市が財政再建団体に指定されている苦しい台所事情の中で建設されたものである。建設費を捻出するために、市有林を売却して充てた。
 士別市が上士別、多寄、温根別と合併してほぼ10年。旧庁舎では増大する行政サービスに器がついていかなくなった。わが身を削ってまでも新庁舎を造る必要性に迫られていたのである。
 庁舎で働いていた職員数は150人。施設内にはまだ余裕があった。会議室も多く、卓球台があったり、1階西側は「市民の部屋」とも呼ばれるオープンスペース。市民が出入りしやすいような配慮も施されていた。
 ところが昭和50年代に入って、行政サービスは福祉、教育、道路、環境整備など一気に増加し、職員数も増加し、庁舎はどんどん手狭となっていく。
 間仕切りを増やしたり撤去したり、資料を保管する場所がなくて、廊下にロッカーが所狭しと並ぶと言った窮屈な状況に。「圧迫感があって、仕事がやりずらい時も……」(市職員)あった。
 ところがである。
 保健福祉福祉センターの完成や新しい市民文化センターの建設、さらにはここ数年、市内から事業所の出先機関が施設だけを残して統廃合が進むことで、その跡地利用のお鉢が回ってきたこと。教育委員会の移転などもあって、施設にもようやっと余裕が出始める。
 IT化にもなんとか対応している。
 現況では新庁舎への話題は口の端にものぼらない。庁舎は自費賄いで建てなければならない。20億円もの事業費はどこをほじくり回しても出てこないとも言い切る。「この施設でまだまだ大丈夫」(市財政担当者)だとも。
 年間約2500万円の維持費が必要な施設。電気系統やボイラーはもはや旧態依然としており、壊れてしまえば億単位の改修費が必要になるという。
 市では施設はこのままでもとりあえずは、「ワン・ストップ・サービス」(年金から水道まで一カ所の窓口ですべての用件を済ますことができるシステム)を構築して、市民サービスに支障の出ないようにしていきたいというのが、今の考え方だ。
 市庁舎をどうするか。現況では問われることのない切実性のない課題ではある。
 ただし将来の自治体合併が視野に入ってきたとき、士別市、近隣も含めて庁舎利用の新たな課題が突きつけられることにもなりそうだ。
(写真=老朽化が進みが、最近になって手狭が解消しつつある市庁舎)