連載-03 市立士別図書館

 厳しい厳しいと叫ばれ、交付税などのマイナスが予想される中で、地方自治体ではなお公共施設の建設が進んでいる。一方では昭和30年代から50年代の高度成長期になって建設された公共施設は老朽化と狭隘化が進み、補修に過重がかかり、さらにはIT化への対応にも追われ、自治体がどこからも補助の望めない単独費の支出増が強いられつつある。それでも士別市の火葬場のように老朽化が著しくなれば、苦しい財政事情の中でも建設は必要となる。行政サービスの向上に公共施設の存在は欠かせないのである。この公共施設を検証して、将来の公共施設像の姿を探っていきたい。

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財政難のあおりで先送り


=手狭、老朽化が加速= 貸出・検索今なお手作業
 かつて講演に訪れた道内の文学者が市立士別図書館のことを「施設を見るなら他の図書館だが、運営と職員なら士別」と評したことがある。
 市民1人当たりの貸出冊数(平均4〜5冊)で、毎年、道内の市立図書館でベスト10に入っていることを見移転案も浮上している市立士別図書館れば、この印象が外れているとも言えないだろう。
 裏を返せば「施設は老朽化して見るべきものはないが、その見劣り分を職員の仕事や運営上でカバーしている」ということなのだろう。
 現代の図書館は今や上下水道や道路などと同様に、暮らしやすい都市の指標のひとつにも数えられている。
 若いお母さんなどにアンケートをとると、身近に欲しい施設のひとつに図書館が上げられ、そこに住むための条件にさえなっている。
 その市立士別図書館だが、「図書館条例はあるが、この施設が正式な図書館施設といえるかどうかといえば……」と首をかしげる関係者も―。
 実はこの施設、昭和41年に建てられた旧中央公民館が前身である。
 当初、図書館はここの一室に間借りしていたが、やがて中央公民館が旧市民会館(現市民文化センター)に移転するとともに、全館を図書館にした。つまり最初からの図書館施設ではない。
 当然、時代を経てくると専用施設ではない弊害が出てくる。
 暖房管理が自前でできないため、冬期間、室温が下がってもすぐに対応できず、利用者から「寒いのでなんとかしてほしい」と苦情が出ることも。
 蔵書も増えてくる。資料として保存しておく閉架書庫も必要だが、これは付け足したようなバラックの老朽施設。どんどん手狭となっていくため、現況では旧共済組合と博物館に古い新聞などを分散して保管してもらっている状態である。
 通常の図書館では考えられないことだが、天井からのすがもりで本が水に濡れてしまったことすらある。これらの修繕補修費もかさんでくるわけである。
 さらに最近の図書館はIT化が進み、本の貸出しをバーコードで対応したり、検索もパソコンであっという間に終わるが、士別市では相変わらず手作業。利用者の待ち時間も長くなる。時代に取り残された感は否めない。
 このためもう10数年来、市民団体が新館建設を要望し、市議会でも早期建設の陳情を可決している。
 が、最新の単独館建設には最低でも10数億の予算が必要である。士別市に今、この財政的余裕はない。市の長期総合計画に盛り込まれた建設年度は先送りが続く。
 ところがここにきて、市が無償で譲り受けた西條デパート旧店舗の再活用とともに、同店舗への図書館移転案が浮上してきた。
 「財政難の折り、このままでは新館は永久に無理。この際、渡りに船では」との声もあがっており、図書館協議会でもこの対応について検討に入っている。
 現在、耐力度調査が行われており、この結果を受けて、移転に向けての施設内容検討も始まるはずである。
 移転に向けてはまだ充分に市民の理解を得たものではないが、新時代に相応しい市立士別図書館像の模索が始まろうとしている。
 (写真=移転案も浮上している市立士別図書館)