2003年 新春インタビュー  士別市・田苅子市長に聞く

山積する課題解決に向けて


 昨年5月、「やり残したことを、自分の手で形にしていきたい」と2期目の当選を果たした、田苅子進市長(64)。第4次総合計画後期計画のスタート、生涯学習のまちづくりを進めるための「人づくり・まちづくり推進計画」の策定など、これからの士別市のまちづくりの基盤を整えた。

  その一方で、地方交付税削減によって、今後の財政見通しはかなり厳しい状況となってきている。来年度からの第2次となる行財政改革大綱実施計画と財政健全化計画を策定したが、公共料金の見直しなども含まれているなど、市民にとっても厳しい時代を迎えそうだ。さらに、市町村合併問題などの課題も山積している。

  こうしたときだからこそ、行政と市民が連携した「協働型」のまちづくりが重要となってくるのだろう。課題が山積する士別市のこれからについて、田苅子市長に語ってもらった。
(写真=インタビューに答える田苅子士別市長)
協働型の第一歩を

 −明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。さて、昨年は市長にとって2期目のスタートの年でもありました。昨年をふり返ってみての感想は。
 市長 5月に市長選挙が行われ、2期目の市政を担わせていただくことになりましたが、あまりにも多くの課題だが山積しています。そんななかで、これからの市政の舵取りは容易ならざるものがあります。しかし、市民の皆さんから多くの期待をいただき「市長」という重い任務をいただきました。それにこたえていく的確な仕事をしていかなければなりません。
 −多くの課題を抱えたときだからこそ、市政の舵取り役となる市長の任務も重要となってきますね。
 市長 こういう時代ですから、いろんな意味での政策判断は勇気がいります。決断も求められるでしょう。それを果敢に実行していくことが、私に課せられた役割だと思っています。たくさんある高いハードルを越えていくには、そんな意気込みが大切ではないでしょうか。
 −市政全般の感想はいかがですか。
 市長 開発促進委員会の皆さんをはじめ、多くの市民の協力をいただきなら、第4次総合計画の後期5カ年計画を策定することができました。後期計画をしっかりと達成していくためには、新たな財源対策を考えながら進めていかなければなりません。仮に、財源の見通しがつかなければ、計画に盛り込まれた事業でも軌道修正しなければならないことも考えられます。
 −地方自治体の財源の柱となる交付税削減は、かなり厳しい状況を招くことになりますね。
 市長 交付税問題は、地方自治体が一番苦しめられていること。さらに加えて、合併問題がある。サバイバルのような状態で自治体運営を行っていかなければなりません。どこの市町村も同じでしょうが。そうした状況であっても、常にまちづくりの主役は市民であり、市民が主体的にまちづくりに参加して、市民と行政が協働の理念で施策を展開していく必要があると考えています。
 −後期5カ年計画には、いくつかのキーワードがありますね。
 市長 「交流」「定住環境」「ひとづくり」「再発見」です。「交流」は、交流人口を増やし、様々な情報を的確にとらえ、それをまちづくりにつなげていく。「定住環境」は、福祉政策をはじめ社会資本の整備などを進め「住んでみたいまち」といった環境を整えていかなければなりません。そしてこれかは「ひとづくり」が最大の課題。生涯学習のまちづくりを進めていくことで、自分たちを磨き、自ら判断していけられるような市民に、期待をしていきたいです。「再発見」は、今一度足元を見つめなおしていきたいということです。
ごく当たり前に思っていることが、実はすごいことだったと言うこともありますね。
 −この4つのキーワードについては、現在取り組んでいる生涯学習のまちづくりと、全市的運動になってきたラブ士別バイ士別運動に包括されるのではないでしょうか。
 市長 この4つを掲げることによって、いま市が行おうとしているすべての行政施策が位置付けされています。最大の効果を上げるような計画の推進をしていきたい。もちろん市役所自体も減量化して、コストを下げ行政サービスに向けていくかという時代でしょう。
 −最近は「協働」をいう言葉をよく耳にしますが、協働・参加型を進めていくためには、行政と市民が互いに意識の改革を行っていくことが必要では。
 市長 市民とのパートナーシップというのが大切なことです。すべてを行政がお膳立てして、それを市民に提供しくような形では、協働・参加型のまちづくりは実現できないでしょう。市民も最初から、参加意識をしっかりと持っていくことが重要だと思います。まちが変わるためには、物を作るだけでいいという時代ではありません。幸福感は物では埋めきれない時代に入ってきています。そうしたことを、人づくり・まちづくり推進計画の中で取り組んでいきたい。昨年は、こうしたソフト面における重要な政策の基本的方向性を見いだす作業をできたことは、嬉しく思っています。実際に「自分たちでやろう」とか「行政だけに任せてしては」と言った動きも出てきています。
 厳しさ増す財政状況

 −士別市の財政はかなり逼迫してきていますが、今後の見通しなどはいかがですか。
 市長 昨年の「市長と語る会」で、市民の皆さんにかなりショッキングな資料を示しました。現実を知ってほしかったからです。それによって、市政に求めることでも変わってくるのではないでしょうか。これまで5年間、財政健全化計画を立てて取り組んできましたが、今の財政状況からするとさらに厳しいことにこれから取り組んでいかなければなりません。それで、第2次計画を策定しました。財政健全化を実施する前の97年度と昨年度を比較すると、経常収支比率は89・4%が89・8%となり、人件費や交際費などの義務的経費の改善に比して、市税や交付税等の歳入が伸び悩み、依然として危険ラインを突破しています。他の指数についても同様で、厳しい情勢が続いていると言えるでしょう。
 −策定した第2次の行財政改革大家工実施計画、財政健全化計画は、かなり厳しい内容になっていますね。
 市長 これまで5年間の計画を実施してきたでの次期計画ですから、なお厳しいものになっています。行財政の簡素化・合理化はもとより、事務事業の再構築を含めて、さらなる見直しを行うとともに、行政と市民の果たす役割と責任を明確にしながら、公共料金の見直しについても検討を加え、健全な財政構造の構築に努めようとするものです。
 −今も出ましたが、計画の中では公共料金の見直しもかなり含まれていますが。
 市長 私が市長になってから、市内の経済は厳しくなっていました。市長が交替し、直ちに公共料金を値上げでは、景気が低迷しているなかで2重・3重の負担を市民に与えてしまうことになります。そのため、公共料金については、できる限り抑えていこうと取り組んできましたが、もはや限界ですね。見直しせざるを得ないところまで来ています。ただ、慎重に試算をしながら議会などとも相談して対応していきます。
 −財政事情がさらに厳しくなれば、今後の予定されている大型事業にも影響が出てくるのではないでしょうか。
 市長 懸案となっているのは、士別中学校の校舎改築と図書館の改築でしょう。士別中学校の校舎改築については、校舎と体育館をあわせて16億円程度が見込まれます。建設のための財源については、国庫補助金や起債で対応することになります。今年度は耐力度調査を実施し、来年度には基本設計と校舎部分の実施設計を行い、04年度着工に向けて諸手続を進めていきたいと考えています。
 −市立図書館の改築についてはいかがですか。
 市長 図書館も築後35年が経過し、老朽化がかなり進んでいるとともに、収蔵面積が不足している状況にあります。本来図書館は、豊富な資料を収集・保存し、多様な機能を備えた施設づくりが求められています。改築にあたっては、高度情報化時代にあった施設として、生涯学習や情報発信の拠点となるべき施設として改築を図っていかなければなりません。ただ、この事業を実施するにあたっては、寄付を受けた旧西條士別店の活用との関係もあり、さらに実施となれば多くの財源を要することから、今後は実施時期などについてなるべく早い時期に結論を出したいと思っています。
 −今後の公共事業確保は、市内経済にも大きな影響をおよぼすものだと思います。その一方で、財政健全化も進めていかなければなりません。そうした状況のなかでの公共事業確保はどのように考えていますか。
 市長 公共に事業については、市内経済の活性化に与える影響も大きく、その事業量確保に向けて充分な配慮をしていかなければなりません。
しかし、市の財政にも限界があることに加え、国の財政も厳しく財政構造改革を図る観点から「骨太の方針第2弾」に基づいた来年度の予算編成作業が進められています。そこでは、公共投資関係費の3%削減、社会保障費の抑制、予算配分の重点化など、歳出改革が図られています。その一方で、地方財政は地方交付税の削減などにより、歳出の徹底した見直し、地方財政計画の規模抑制の方針が示されるなど、極めて厳しい状況下にあり、公共事業を取りまく環境は大変な状況にあると考えています。そうしたなかで、財政の健全化との両立を図りながら事業を確保するとともに、国や道の事業についても確保できるよう要請していきたいです。
03年度は継続事業が中心に

 −現在は、来年度の予算編成作業が進められていますが、来年度はどのような事業を計画していますか。
 市長 予算編成作業を進めているところであり、詳しい内容は明らかにできませんが、ハード事業では道路、街路、下水道、道営基盤整備事業や農道整備事業などの継続事業が中心となります。そうしたなかで、今年度から実施している北部団地建替え事業の1棟20戸をはじめ、上士別団地の建替え事業で1棟2戸、さらには簡易水道の統合事業実施のほか、04年度に改築を計画している士別中学校校舎の実施設計のための予算措置を図りたいと考えています。
 −昨年は天候不順によって、農作物に大きな被害をもたらしましたが、農業関連事業ではどんなものを計画していますか。
 市長 来年度は農業・農村活性化第2期計画のスタートの年でもあります。消費者の大きな関心事であります食の安全、安全で良質な農畜産物を生産するため、「土づくり」を継続しながら、土地基盤の総合的な整備を推進して、農業経営の体質強化と食料の安定供給体制を確立し、経営の効率化を目指す組織の育成に努めるとともに、地産地消の気運を醸成することで、豊かな食生活・食文化の推進につとめていきたいと思っています。また、体験農園の開設やグリーンツーリズムなどの地域特性をいかした主体的な農業・農村づくりも推進していきたい。
 −今年度から着工となった天塩川士別地区河川防災ステーションは、どのような見通しになっていますか。
 市長 昨年は盛り土などの都甲孝司が終了し、来年度は水防センターの国が担当する部分の工事が開始される予定です。河川敷のサッカー場や桜づつみなどとあわせて、河川防災ステーションを中心に付近一帯の有効活用が図られるよう、工事の順調は進捗を期待しています。
 −昨年から建設している中心市街地交流施設あすなろ交流館「ぷらっと」も間もなくオープンですね。
 市長 2月下旬のオープン予定です。この交流施設と一体的な有効活用を図るため、資源循環型事業として既存のあすなろ公園を、商店街のイベント広場や市民のコミュニケーションの場として利用できる「ポケットパーク」の整備を03年度に実施します。さらに、周辺の駐車場も整備し、交流施設周辺の一体的な環境整備で、中心市街地の新たな動線づくりと賑わいの創出を図っていきたいです。
 −ソフト事業についてはいかがですか。
 市長 先ず、姉妹都市提携を結んでいるゴールバーン市との交流ですが、今年はサフォーク研究会が創立20周年を記念して、ゴールバーン市長の招へいを計画しています。さらに、正式には決まっておりませんが、ゴールバーン市のマルワリー高校から10人程度が士別を訪問し、市内高校での交流やホームステイなどを行う計画があります。これが実現すれば、今後の高校生の短期留学システムに大きな弾みとなるものと期待しています。
 −介護保険関係ではいかがですか。
 市長 第1期計画の達成状況と今後の推移や社会情勢の変化、国・道の考え方などの検証を行いながら、第2期の高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画を策定しています。65歳以上の介護保険料については、現行額を維持する方向で考えています。
 −福祉のまちづくり条例(仮称)の制定に向けて準備を進めていましたが。
 市長 誰もが同じように行動し、社会参加できるまちとしていくためには、日常生活や社会活動を行ううえで、制限を受ける人たちの不自由さを感じながら、こうした人たちが不自由なくいきいきと生活できるまちにすることが重要です。そうした意味では、ハード・ソフト両面からの福祉的配慮が大切です。士別市福祉のまちづくり条例は、市民が一体となって人にやさしいまちづくりを進めていくための力強い一歩だと思います。条例は、市や事業者、市民の責務を明らかにし、それぞれの役割の自覚のもと相互に協力と連携ができる取り組みを目指していきます。
旧西條店舗の活用、調査結果を待ち利用計画

 −昨年は、旧西條士別店の寄付を受けました。士別市農協の事務所や図書館の移転などと、その活用法については様々な検討が行われていると思います。市内にとってはかなり大きな施設であり、これをどのように使うかは市民の関心も高いところです。旧西條士別店の利活用についてはどのように考えていますか。
 市長 市民の関心の高さは理解しています。有効に利活用していくため、庁内に検討委員会を設置して、その活用方法について様々な角度から検討してきています。基本的には士別市農協の事務所などをベースに考えています。
 −図書館の移転も構想にあるようですが。
 市長 図書館の移転も視野に入っています。幅広い世代の市民が集い、ゆったりとした時間をそこで過ごせるような空間を生みだすという観点で、市民ギャラリーや視聴覚コーナーなど、生涯学習活動の支援拠点施設という性格も加味しながら、多くの市民団体の活動・交流の場としても検討を進めています。
 −昨年12月の市議会定例会に提案した補正予算で、調査費を計上しましたね。
 市長 当初の予定では、昨年の11月中に利用構想のアウトラインを固め、市民の皆さんにそれを示して意見をいただく予定でした。ただ検討の段階で、エレベータが動くか、電気系統は大丈夫か、床の強度はあるのかなど、建物の電気・機械・設備や構造をしっかりと調査しなければ、実行性のある利用計画の策定は困難であるとの判断から、現在その調査を委託しているところです。
 −具体的な利用計画は、その調査結果を受けてからとなりますね。
 市長 そうです。調査結果が明らかになったあと、できるだけ早い段階で市民の皆さんに基本構想を示したいと考えています。なにせ広いスペースなので、いろんなことを考えることができます。
 −ここに図書館を移転すると言うことになれば、図書館の改築計画も早まりますか。
 市長 まずは、建物のボディーチェックを行ってからですが、どうやって財源を確保するかが次の課題です。国の経済対策などに乗れればいいのですが。
 −最近は「協働型」のまちづくりをかなり強く訴えてきていますが、どのようなことから「協働」と言う発想が出てきているのですか。
 市長 これまでは、行政が市民の試験を施策に反映する手法として用いてきたのは、多くの場合「素案」とか「原案」という資料を市民に提示し、それに対して意見を求めるものでした。市民は膨大な資料に見るだけでうんざりしてしまし、枝葉末節の訂正はあるにしろ「原案通り」が大半でした。これからは違います。民間においては「プレゼンテーション」などという形で、図や映像を駆使しながら担当者が自分のプランの有効性・優位性を熱く主張します。一人ひとりがプランナーとなり、そこから創りあげていくことが大切です。「原案」が示された段階では、もはや平場≠ナなくなってしまっている。「市民との協働」を推進していくためには、スタートについたときからプランを出しあっていく。そうでなければ協働型とは言えません。
 −何か「協働型」のいい例はありますか。
 市長 中心商店街の活性化策などについて話し合っている、商店街振興検討委員会などはいい例です。一昨年に委員会がまとめた報告書「憩い・集う・やすらぎのある街づくりを目指して」は、いいサンプルです。みんなの合作から生まれた成果品です。行政が持ち込んだ資料はほとんどなく、「まちの元気をだすためにどうしよう」とみんながそれぞれの思いを出しあって集積していく。こうした取り組みが協働参加型のまちづくりです。
 −市民が行政を頼りすぎてきた部分、行政が手を出しすぎてきた部分がありますね。
 市長 これまで、市が進めてきた施策や事業のなかには、行政として取り組むよりは、市民団体が独自に取り組むかあるいは市民団体と行政が連携して取り組んできた方が成果が期待できるというもの、さらには市民主体なら実現できるという活動や事業があったのではないでしょうか。ある程度の役割分担を明確にするとともに、連携・協力が必要なものについては、さらに市民と行政の関係をより緊密にして、互いの特性を最大限に活かす形で「協働」していくことが、強く求められていると思います。
住民自治考える大きなチャンス

 −全国的に市町村合併が大きな課題となっています。士別市においては昨年、庁内に合併問題研究・検討委員会が設けられ、情報の収集・分析を行ってきました。さらにそうした情報は、市の広報などを通して市民に提供してきました。これかは、市民論議の段階に入りと思いますが、市町村合併についてはどのように考えていますか。
 市長 これからのプロセスになりますが、合併をするかしないかを正式に話し合っていくには、法定協議会の立ち上げが必要となるでしょう。ただ、その前に任意の協議会等で話し合っていく必要もあるのではないでしょうか。一応、現在の合併特例法にはタイムリミットがあります。こうしたシナリオをどのようにしていくかについて、ある程度の形を整えなければならないでしょう。
 −1つ合併パターンとして士別市、和寒町、剣淵町、朝日町という1市3町があります。この4市町村で何らかの動きが考えられますか。
 市長 やはり1度、同じテーブルにつかなければならないと思っています。その前に市民にも「どのような形を取っていくのか」を説明していかなければなりません。いろんな機会を通じて、市民の皆さんと話し合っていきたい。
 −一般論として、合併後の中核となるであろう「市」については推進派が多く、中編の町村は反対派が多いですね。
 市長 ただでさえ、道内の多くの自治体は衰退傾向にあります。そのうえ、市町村合併によって役場がなくなるようのことになれば、ますます寂れる傾向にあります。できることなら、このまま独立独歩の道を歩みたいというのは、偽らざる本音ではないでしょうか。一番大事なのは、地方自治は戦後に創りあげられた国と地方との関係。その地方自治が成熟期に入っているにもかかわらず、こんなに簡単に国にねじ伏せられるような構図があっては、以前にも劣ること。原資の時代のことですよ。地方自治体の首長は、今こそ怒らなければならない。でも、現実は国の金がなくなってきた。地方自治体も困っているとなれば、「合併」という検討も必要となってくるのかもしれません。だからこそ、もっとわれわれに議論する時間がほしいのです。市民論議では、単に「合併は損か、得か」ではなく、真の住民自治を考えるための大きなチャンスとの認識を持って、この問題に対処していきたいです。
 −どうも、ありがとうございました。