2006年 新春インタビュー 合併新生の初代別市長になった田苅子市長に聞く

新市の抱負語る:「理想」が着実に浸透


  旧士別市と旧朝日町が合併し新生「士別市」が誕生して4カ月が経過した。新市の初代市長に就任した田苅子進市長はこの間に、新市誕生記念式典、市議会定例会、市長と語る会・行政懇談会などを精力的にこなしてきた。新市誕生からこれまでは、旧両市町の予算を引き継いできたもので、実質的には06年度が新市まちづくりが本格化していくことになる。今後の抱負について、田苅子市長に聞いてみた。
(写真=インタビューに答える田苅子新士別市長)
素材の豊富さに目を向けて

 ― 昨年9月に新生「士別市」が誕生しました。そして10月には市長選挙が行われ、新市の初代市長に就任しました。これまで過ごされたきた率直な感想をお聞かせください。
 市長 国の三位一体改革のなかで、地方財政も困難な状況で進めていかなければならないという、時代の認識をしっかりと持っていなければなりません。そのなかでも少子高齢化、環境問題などさまざまな課題が山積しています。こうした時代背景のなかで旧士別市と旧朝日町は、地域の自主性と自立性を重んじながら「生き残り」をかけて合併の道を選択しました。ひじょうにおだやかなスタートを切れたと思っています。
 ― 新市のまちづくりについて考えることは。
 市長 まずは旧両市町の住民の相互信頼に基づく融和と一体感を醸成することでしょう。それから合併効果を最大限にいかしながら、後世の人たちからも「合併して良かった」と評価してもらえるまちづくりを、みなさんと一緒になって協議していけるということが、今回の合併の最大のメリットではないでしょうか。さらに、合併特例法の恩恵を受けながら、これから10年のなかで将来に向けた土台をしっかりと作りあげていくことも大切です。さらに、合併をすることによって互いに持っていたまちづくりの素材を刺激しあっていけば、もっと素晴らしい取り組みができるはず。
 ― まちづくりの「素材」とは、具体的にどのようなものですか。
 長 例えば、朝日でいうならばサンライズホールとか、観光面では天塩岳や岩尾内湖があります。さらに三望台シャンツェを使った合宿もあります。ただ、単にものを作るという発想だけではだめ。夢を持って、それをどのように描いていくかが大事。新市の市民がふるさとの素材の豊富さに目を向けていくことが重要です。そういう点からすると、今回の合併は素晴らしい合併です。そのことに大きな自負を持っていいと思います。市長と語る会や行政懇談会でもそう言ってきました。
 ― 朝日地区で行った行政懇談会ですが、こまめに朝日地区をまわり地域の人たちと懇談したのは、市長にとって今回が初めてだったのではないでしょうか。
 市長 そうです。楽しかったですね。いろんな話しを聞いて、わたしが想像していた以上にみなさんがいろんなことに取り組んでいることが分かりました。再発見です。ざっくばらんに話すことができました。
 ― 合併協議の段階では、朝日町民のなかには地域の衰退などを危惧するような声がありましたが。
 市長 選挙での第一声や、当選後の初議会、そして市長と語る会や行政懇談会などでわたしの考えを多くの人たちに聞いてもらいました。特に朝日では、合併による陰りを危惧するような声もありましたが、地域に陰をつくってしまってはだめなんです。そうした意味では、わたしが考え描いてきた理想を少しずつでも理解してくれるようになりました。すごくうれしいことです。だからこそ、本気で取り組んでいかなければならないと思います。
 ― 合併協議のなかでは朝日の雰囲気とすれば、士別に吸収されるとか、地域が衰退するなど、どうしてもマイナス的な考え方が多かったようですが、合併してわずかな期間でも互いに見方が変わってきているのではないでしょうか。
 市長 やわらかい目で見るようになってきてますね。
 ― 互いに何かを感じあうようになってきているのではないでしょうか。
 市長 それぞれが持っているいいものを、しっかりと評価してきています。素晴らしいことです。そうした意識のもとに、どうすればさらに高めていけるのか、もっと大きいものにできるのかなどを考え合っていくことが大切でしょう。
 ― 社会資本整備がほぼ整ってきている状況では、住民ニーズも変わってきているのではないでしょうか。
 市長 そうです。市民のニーズも量産ではなく、質を求めるようになってきています。心を満たせるものです。そうなるとハードからソフトに変わってきます。
 ― 市長は新市が誕生してから常に「宝を見つけ、原石を磨いていきましょう」と言っていましたが、いろんな意味で可能性が広がっているのではないでしょうか。
 市長 すごく多いと思います。それをどのようにいかしていくかということには、知恵が必要です。例えば、旭山動物園を思い浮かべてください。ここ数年の人気で、あの動物園にはたくさんの観光客が訪れています。そうした観光客は、動物園を見たあとどこに行きますか。道北に流れる数はかなり少ないのです。動物園のなかで観光客らに士別のサフォークラムやオホーツクに抜けるのに朝日を通ってはとPRしてみてはどうでしょう。何もしないでじっと座っているようでは、いつまでも発展はしません。
 ― 地域の個性を、より広く訴えていくということも含みますね。
 市長 時代の変化を先取りしながら、それまでの慣例にとらわれない発想の転換で、地域が主体となった個性あるまちづくりを市民と行政が一体となって推進していく、協働のまちづくりを実践していきたいです。
 ― 協働のまちづくりを進めていくためには、やはり住民の融和と一体感が必要になってきますね。
 市長 それにはイベントが一番いいと思います。お互いに往来するという意味でも。
 ― 合併協議において、新市で「再編」「統合」となっている事務事業等の今後の取り扱いについてはどのように考えていますか。
 市長 合併後に統合すると言ったものは86項目、合併後に再編するというのは225項目ありました。合併後に統合するといった項目で最大の事務事業は朝日地区における自治会制度への移行でしょう。これは、今後5年間を最大限の検討期間としていますので、スムーズに自治会制度に移行できるよう理解を求めていきたいと思います。
 ― 合併後再編という項目についてはいかがですか。
 市長 この項目では、国民健康保険事業、農林水産関連事業、中小企業の振興に関する事項、公営住宅の家賃、水道料金と下水道料金、高齢者福祉事業などがあります。これらについては合併協議に基づいた再編の時期までにすみやかに対応していきたい。とにかく、これらの事務事業は相互信頼に基づく融和と一体感の醸成に十分配慮しながら、確かなまちづくりにつながるよう努めていきたいです。
 農業を基盤とした体制づくりを

 ― 現在、編成作業を進めている06年度予算は新市として初めての通年予算となりますね。
 市長 予算の目玉となると、どうしてもハード事業に目がいきがちですが、わたしはいままで旧両市町が取り組んできた内容というものをできる限り大事にしていきたい。
 ― 市内経済も長引く景気の低迷によってかなり冷え込んでいます。市内の経済対策という点からも、ある程度の公共事業確保は必要なのではないでしょうか。
 市長 わたしは国や道に対して言っていることがあります。北海道には新しい公共事業が必要だということを。それは、将来の食料供給基地です。農業投資を基本とした公共事業です。北海道は第1次産業を大切にして食料基地づくりを進め、さらに農産物の付加価値を高めていく。そのための起業を行っていく。そうすることで農業を基幹産業とするこの地域は潤い、商店街の振興にもつながる。そして定住環境も整っていく。そんな政策が必要なのです。
 ― 農業を基盤にした体制づくりを地元で進めていかなければならないということですね。
 市長 もちろんです。それと観光もそうです。癒しの北海道です。安心して子供を育てられる地域。自然のなかでゆったりと育てることができます。
 ― 農業を基盤とした体制づくりという意味では、上士別地区の国営農地再編整備事業も重要となってきますね。
 市長 この事業は、単なる生産のための事業ではない。新しい農村の、新しい生き方を作るものです。事業の採択そして推進に向けて全力を尽くしていきたいです。
 ― バード事業だけが目玉ではないということですが、新年度で予定しているハード事業はどのようなものがありますか。
 市長 新市の建設計画など各種計画に基づいて、市民生活の基盤となる市道整備や農業基盤整備など、財政状況を勘案しながら行っていきます。そのなかでも士別中学校の屋内体育館をはじめ、糸魚小学校の校舎改築にも取り組みます。継続事業としては、北部団地や統合簡易水道、浄水場整備なども実施していかなければなりません。さらに、06年度以降についても特別養護老人ホームの増床、最終処分場の建設など大きな課題が残されています。
 ― ソフト事業についてはいかがですか。
 市長 財政的にこれまでの事業の継続が精一杯の時代ですので、新たな事業展開は難しいでしょう。それでも、士別・朝日の既存の施設や人、文化、スポーツをいかした施策の構築を目指していきたいです。
 ― 財政状況も厳しさを増してきているようですが、今後の行財政改革の取り組みはいかがですか。
 市長 行政改革というのは永遠のテーマです。かつての高度経済成長時代のように、地方への交付税が潤沢にくるようなときはもう2度とこないでしょう。
― これまでも積極的に行政改革に取り組んできていますが、今後はさらにどのようなことに取り組んでいく考えですか。
 市長 在来の延長線上での発想ではできないでしょう。さらに、これからの時代は新陳代謝を進め新しい政策に取り組んでいかなければなりません。例えば、各種団体に対する補助金なども、一度補助すればいつまでも永久にと思われても困ります。
 ― これから行政改革を進めていくには、市長がよく言うように市民も「協働」の意識を持たなければならないということですね。
 市長 そうです。ここまでくれば行政に何でも頼るのではなく、市民自らできることは汗してもらいたい。そうした意識を持たなければ、これからのまちづくりは前へ進めることができません。
 ― 自ら汗を流そうという市民はここ最近増えてきているのではないでしょうか。
 市長 増えてますよ。いいことですね。
 ― 行財政改革の指針となる計画策定についてはいかがですか。
 市長 市としても現在、国が地方自治体に求めている06年度からの集中改革プランを策定しており、これを基本として財政健全化計画と定員適正化計画などを作成していきます。
 ― ここ数年は新規採用をひかえていますが。
 市長 国からも人件費の抑制は強く求められていることもありますが、士別はこれから多くの退職者が予定されています。そうした点からもしっかりとした定員計画をたてていかなければなりません。さらに、各事業の再編や統合など、合併協議の方針に基づいて行っていきますが、07年度以降は地方交付税のさらなる見直しも予想されるので、合併効果が十分に表すことができるよう努めていきます。
 ― 行政改革の一つの方法として公共料金の見直しということもありますが、今後の公共料金に対する考え方はどうでしょう。
 長 おもだった公共料金については合併協議のなかでいくつか定めています。例えば、旧両市町で相違がある法人住民税については07年度までそれぞれの税率を使い、08年度から士別の税率に統一します。旧士別の方が高い上下水道料については07年度まで現行料金として、08年度に再編します。保育料についても06年度と07年度の調整期間を設けて08年度に統一することにしています。
 ― 介護保険料や国保税はいかがですか
 市長 いずれも06年度から統一することになっています。国保税については基金もほとんどなくなるような見込みで、かなり厳しいです。介護保険料については、利用状況などを的確にとらえて判断していきます。
まずは新市建設が優先

  ― さて、これからの課題ですが、昨年の国勢調査で2万3千人台となりましたが。
 市長 一部の地域を除き全国のほとんどの市町村の人口は減少しています。さらに、人口減少の歯止めとなる決定打がありません。
 ― そうすれば、この問題をどのように解決すればいいのでしょうか。
 市長 長い目でみて、少子化対策などが必要。さらには、起業家を育成して地域購買力を高めるような策も必要かもしれません。なによりも大切なのは、基幹産業である農業・農村の振興策です。このままでは、働く場所もない、人口も減少していく、高齢化が進むといった悪循環です。根本的な問題解決のためには国の対策が必要です。しかしながら、この合併を契機として地域の個性や特性をいかしたまちづくりを進めていくことで、このまちに住んで良かった、こんなまちに住んでみたいと思ってもらえる元気な地域をつくっていきたいです。そのことが、人口の減少にすこしでもつながっていけばと思います。
 ― 3月になれば、道も新たな合併の枠組みを示してくるでしょうが、そこのとについてはどう考えていますか。
 市長 これほど財政の締め付けがあれば、住民の行政に対する意識、さらにはまちづくりへの意識が大きく変わらない限り、どの自治体も債権団体へと陥るでしょう。そうなれば、それまでの行政サービスの維持は続けられず、合併は避けることができないしょう。そうなったとき、新たな枠組みというのが出てくるでしょう。
 ― 新市が誕生し、スタートしたばかりですが。
 市長 とにかく、新市の市長として旧市町の均衡ある発展を目指していくためには、まだまだ積み残されたものがたくさんあります。それをこなしていくためには相応の時間が必要です。新市としてしっかりとした基盤ができたときに、合併という課題が出てくれば、そのときに考えます。
 ― 当面は新市の基盤整備が先決ということですね。
 市長 そうでうす。旧両市町が明日をみて語りあってきたのですから。とにかく新市の建設に向けて頑張っていかなければなりません。
 ― ありがとうございました。