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進化する 「マイスター」

職人さんが尊敬される国ドイツ

 職人さんが尊敬される国ドイツ 別表1 別表2

<バイエルン州:ミュンヘン市>

 ミュンヘン市はドイツ(人口:8202万人、面積:35万7千?2  )の南部(アルプス近郊)にあり、ベルリン・ハンブルグに次ぐドイツ第3の都市(人口:約130万人、バイエルン州の首都)である。美しい景観と農業・学術などの街である。 札幌とビールが取り持つ姉妹都市(世界最大のビール祭り「オクトーバーフェスト」)で、2006年にはワールドカップが開催される。(郊外に準備が進行していた)

職人さんが尊敬される国ドイツ

 現在我が国において雇用政策は重要な課題になっている。一つには産業構造の変化による失業率の上昇(全国5.0〜4.8%、北海道6.9〜5.6%)であり、もう一つは若年層の就業率低下(高卒者の就職内定率H15/1579.7% H16/1681.1%、高卒者の離職率25%/年)である。(近年はNEET=若年無業者も問題になっていて、全国で52万人いると言われている)

 対策として、高校生及び大学生の「インターンシップ制度」や、ハローワークの「JOBカフェ」「ワンストップサービス」などを試みはじめたところである。 しかし、もっと根本的に職業意識の教育やものづくり意識の醸成が必要なのではないか、との視点で今回ドイツの「マイスター制度」について学ぶことを目的にバイエルン州ミュンヘン市を訪問しました。

 ドイツは巨大企業の数は少ない国ですが、足腰のしっかりとした中小企業で成り立っている国です。これを支えているのが「マイスター制度」です。 世界で最初に高速道路(フリーウェイ)を造り、丈夫で安全な自動車の生産国としても知られていますが、他にも楽器・ビール・刃物・革製品・万年筆など世界的に有名な製品を作り出しているのは様々なマイスターの活躍によるもと言えるのではないでしょうか。

マイスターは国家資格

 マイスター(Meister)とは、ドイツ語で「親方・名人」を意味しますが、中世から伝わる職匠制度、身分資格階梯、徒弟制度であり、特にドイツは「強制職人遍歴」が19世紀末まであったといわれています。(かつて日本では、古い階級制度として伝えられていた)

 1953年9月に法制化された職能訓練の社会制度が「マイスター制度」であり、政府が与える"国家資格"です。制度運営は公的機関である「手工業会議所(Handwerks kammer)」が担っており(全州にあり、バイエルン州で6万社加盟)、我々はミュンヘンにあるバイエルン州手工業会議所のクリス(Christian Fersch)アドバイザーとジィラー(Richard Zierer)指導官から実態を調査した。(ミュンヘン日本総領事館の村上氏にお世話になったことを付記します)




マイスター制度とは

 12才までの基礎学校(小学校=義務)は、子供達のそれぞれの能力を探す場であり、基幹学校(中学校=義務)は、自分がなろうとしている職種と勉強がどう結びついているかを学び、ビデオや実地見学を通して自分が、その職業に適しているかを探します。

 15才(高校)になると就職しますが、個人と企業の契約ではなく企業と州労働局の契約である。週1〜2回は職業学校で理論を3年間学び(学費は企業が負担)、合格すると一人前の給料を貰うが、まだマイスターではない。更に5年間実務を学んだ後会社を退職し1年間専門学校に入学し(国や州から最終給与の60%が支給される)、マイスターを受けることが出来る。<別表1参照

 学術もいろいろな能力の一つとの考えから、大学進学率は25%程度であり、75%は実科学校から専門学校(ドイツで約200校)へ進むとのことです。 <クリス氏談→>

 日本は常に総合評価が子供の優劣を計るシステムであり、小中学校で社会にどのような職業があって、それがどんな仕事なのかを考える職業観教育のプログラムが不十分で、一人ひとりの適正能力を発揮しずらいシステムといえる。

転機のマイスター制度

 東西ドイツの統合、EUのスタートという時代の中でドイツは経済構造改革に取り組み、1953年に職能制度として法制化されたマイスター制度は、2003年12月改正手工業法(Gesetzzur Ordnung des Handwerks)として成立した。(2004年1月1日施行) マイスターの資格取得義務職種は全部で94業種ありましたが、今回の改正により資格取得義務を免除される業種は53業種(法案の段階では65業種)、資格取得が引き続き手工業設立の要件となる業種は41業種(法案では29業種)と改正されました。<別表2参照

 政府がマイスター制度の見直しに乗り出した背景には、2003年1月に発効した労働市場改革法(当時の失業者430万人)で「個人企業」や「ミニジョブ」を積極的に育成しようとのねらいがあった。

 併せて、従来は手工業企業の所有者がマイスター資格取得者でなければならないことになっていたが、この原則も撤廃された。今後は、経営者にマイスター資格取得者を雇い入れた会社形式をとれば、企業を設立したり買収することが出来るようになり、この措置は手工業界における後継者問題や手工業企業設立の緩和をねらいとして導入されたと思われます。

手工業法改正の効果

 ドイツは企業に占める自営の比率が欧州諸国に比べ低く(ドイツ9.3%、欧州平均12.3%)、又ドイツ内の手工業の創業比率は産業全体と比較するとかなり低く(産業全体12.3%、手工業4.7%)、これはマイスター制度に象徴される高い市場参入規制によるものとされてきました。

 手工業法の改正によって技術レベルや人材の質の低下を招くのではないかとの懸念があります、更にマイスター資格取得義務の対象から外された企業は全体の約6割にも上るドラスチックな改革であるような印象を受けますが、規制対象外の業種は比較的マイナーな業種が多く、引き続き資格が必要とされている業種は、手工業企業や手工業従業員の9割を占めていることからそれほど影響はないとのことです。<ジィラー氏談→>

 マイスター資格要件が引き続き必要な業種でも「徒弟として6年間経験を積み、その内4年間責任ある地位についていた場合は、マスター資格なしに手工業企業を設立することが出来る」という資格要件の緩和は、「6年間の徒弟としての修行と3年の責任ある地位での活動の後企業を設立できる」という"欧州法"の企業設立要件ともほぼ合致することなど大きな意味を持つものと言えます。

 ドイツ伝統の「マイスター制度」は、「失業者の削減」「個人企業の創設」「EUからの参入」という新たに挑戦に向かって進化させていると実感しました。 日本(北海道)においても学校における"職業観教育"や、生活の中における"ものづくり"に触れる機会(サタディJOBのような)と、社会制度(訓練中の保障など)の整備が必要と考えます。

 職人さんが尊敬される国ドイツ 別表1 別表2

 佐々木隆博